会社の外に出た途端、全身が冷水に浸ったかのような、とんでもない外気の冷たさを感じて驚く。これはちょっと、普通とは言えない寒さ。寒さというよりも、なんか違う、もっと前向きに迫力のある、はっきりとした気象的なできごとの体験というか、いまここで身体が感じている異常現象という感じ。しかし、そこまで言うと明らかに大げさで、実際のところ2℃か3℃くらいの気温なので、冬1シーズン中、たまにはそのくらい寒い日というのはあるだろうが、でも今年はやはりかなりのものだ。少なくとも去年よりもまるで寒い。全身が寒さを押し分けて進もうとするが、信号で立ち止まると、すさまじい勢いで寒さが体内に侵入してくる。手や足の先は外気に触れて先端が麻痺するような痛みをともなって半分消えかけている。首元や足元から暖かさが洩れ出ていき身体が冷めていく。それが逆に楽しくなってくる。小さく身体をすぼませたくなるような感じではなく、むしろ大変なことだと言って新鮮な寒さに身と心をあわてふためかせながら歩く。