2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ヒューマントラストシネマ有楽町でホン・サンス「WALK UP」(2022年)を観る。とてもよく出来ているというか、ちょっときれいに出来すぎかもしれない。もちろんすべての辻褄が合っているわけではないし、伏線回収みたいなことでもなく、しかし鮮やかである。 …

ポテはフランス料理。豚肉と野菜の煮込み。あらかじめ塩して置いた豚肉をローリエとニンニクで下茹でし、続いてジャガイモ、セロリ、ニンジン、キャベツなど加えて、合計1時間ほど煮込むだけ。出汁の素だのスパイスだのもなく、酒さえ用いず、ただ水から煮込…

子供の頃、夏休みなどで父の実家へ帰省していたとき、その家は商売をしていたので、大勢の人を呼んで宴会を催すことがあった。その日になると座敷の襖はすべて外されて折り畳み式の机がいくつも並べられて、そこに所狭しとばかりにビール瓶や大小の料理皿が…

羽虫が光に向かって一直線に進む。羽虫が光に向かうのは羽虫の意志ではなく本能であり、そのとき羽虫に迷いはなく決意もなく諦めもなく快楽もない。羽虫に選択の余地はないがゆえに、そのとき彼は賢明であり完璧な生命である。 動物は獲物を捕食し、ときには…

「テニスボーイの憂鬱」の主人公は、物語が始まった直後においては、始終周囲を見回し、彼が所有する高級車とは無縁の、市井の「貧乏人」の、自分に対する態度や仕草や目つきを見て、それを蔑み、嘲笑し、優越感をおぼえ、自分がああでなくてよかったと胸を…

「テニスボーイの憂鬱」の主人公はテニス、その父親は狩猟を嗜む。この成金の親子は、共に「遊び」を知っている。テニスボーイの祖父は「百姓」として働くばかりで、一生遊ぶことがなかったと父親は言う。しかし遊びは果てしなく、満足を知らず、あれもやり…

電車を降りた直後、降り注ぐ太陽の光と熱気が、昨日までとは完全に違った。夏と言うよりも、いよいよ厄介な時節の到来という感じだ。 夜、建物を出てからも、昨日の夜とはまるで違う、長時間蒸されたような空気があたりにたちこめていて、いよいよ来たねと。…

RYOZAN PARK巣鴨で、保坂和志「小説的思考塾 vol.17 with 山本浩貴」。たとえば難解な書物を読むとき、書かれたことから連想を働かせても良いけど、書かれたことを解釈してはいけない。なぜなら自分は、自分の許容量の枠内でしか受け取ったものを解釈できな…

坂本龍一「hibari」は、フレーズがズレつつ反復する構成で、曲調はまったく違うけど、B-2 UNIT「differencia」と大体同じことをやってるのかもしれない。(意外と似てる…のか) 妻がヒバリの鳴き声をスマホで再生させる。それはまさに「ぴ-ちくぱーちく」のく…

25メートルのプールが混雑してたので、15メートルのプールで泳いだ。15メートルを何往復もするのは、非常にせせこましい動きというか、まるで自分がケージの中を無意味に動き回る小動物になった気がしてくる。 何となく気が乗らず早々に切り上げた。42往復……

フリージャズは、単に音の質感の気持ちよさだけでイケてしまう危険(?)は、避けがたくある。それは危険ではなくて、それで全然かまわないのかもしれないけど、でもほんとうなら、フリージャズは「聴けない」ことを目指すのだとしたら、その地点には到底たど…

たとえば国分寺、僕が知っているその場所は80年代で、そんな景色はもうすでに跡形もない。 中央線沿線、立川、国分寺、三鷹、吉祥寺、荻窪。ほんとうに変わった。僕の実家は西武新宿線沿線だけど、東村山から国分寺線の途中にある高校へ通い、さらに国分寺や…

信号が青になるのを待っているとき、信号はいわば水道の蛇口で、我々はそれが開けば流れるし、閉じればその場にとどまる。 どこかで状態管理がなされていて、どこかに管理画面があって、それにアクセスすればトラフィック全体とそれに対する各信号の稼働状況…

ある人の幼少時の話。七五三だか端午の節句だかを祝うために祖父が長野から上京した。お土産に、生きた鯉をぶら下げてきたのだそうだ。 今から三十年か四十年くらい前の話である。長野から、電車に乗って、何時間かけてか、その間鯉は口に濡れた布か何かを咥…

昨日見た「チャレンジャーズ」では、その中心にあるのがテニスであり、主要人物らはその魅惑からけっして自由ではない、それをただちに感じて、ただそれは映画からそう感じさせられたというより、たぶんそこからの連想として、どうしたって村上龍の小説「テ…

MOVIX亀有でルカ・グァダニーノ「チャレンジャーズ」(2024年)を観る。テニス試合中の場面からはじまり、試合の進行と並行していくつもの回想場面が挿入され、登場人物らがそれぞれどんな立場でどんな関係なのか、それまでのいきさつや物語の骨格が見え始めて…

小説も映画も、本来おそらくはそうだと思うが、それは何かを伝えようとする意志であり、多様な出来事の織りなす多重奏であり、その複雑で繊細な織物であると同時に、どこかでジャーナリズムでもあり、ゴシップでもあり、現実の世界へのあてこすり、冷笑、皮…

身体的な苦痛に対して、泣いたり悲鳴を上げたりする人もいれば、ただひたすらじっと耐える人もいるという話を、数日前に書いたけど、それは文章にも、似たところはあるのかもしれないと思った。 自分にそれはあてはまる気がするのだが、なんというか、やせ我…

統治者の意識や考えを、非統治者である自分が内面化してしまうのが権力の作用で、たとえば会社組織に属していながら、当の組織に対して反目するのは、自分も何かのはずみで組織的人間になろうとしかねない、無意識下に何かを内面化してしまいかねない予感に…

大貫妙子「突然の贈りもの」という曲で、歌詞の主人公の女性は、過去にはいろいろあったけど、今は元気でいるから安心してねとうたう。みんなではじめた、あたらしい仕事にも慣れて、と。 大貫妙子 突然の贈りもの - YouTube 友人関係から仕事仲間に変わって…

図書館で借りてきたナイチンゲール著作集1より「女性による陸軍病院の看護」「看護覚え書き」それぞれ、少しずつ読んだ。これは、予想以上に面白いな。返却日までに読み切るのは不可能だと思うが、書き手の息遣いというかリズム感が伝わってくるような文章で…

山手線のどの駅を主に利用するかと言えば、僕はこれまでの数十年間のほとんどが池袋から上野の区間である(通勤で西日暮里から横浜までnの区間を十年以上利用しているが、山手線圏内の話なので、ひとまずそれはおく)。 だから自分にとっての山手線のイメージ…

OGU MAG+で古谷利裕 個展「bilocation/dislocation」を観る。 この制約、この条件を受け入れる、それは仕方がないこと。それを「仕方がない」と言わないために、事前に努力する手もあるかもしれないが、「仕方がない」ことは受け入れたうえで、しかしそれで…

Amazon Primeでエリック・ロメール「レネットとミラベル/四つの冒険」(1989年)を観る。面白い。もうロメールしか観れないね、映画はロメールに尽きるねと言いたくなる。最初から最後まで、物語を一々細かく書きたくなる。でもそれをしてもこの面白さはけっし…

注文した高柳昌行「Projection / The Complete Inspiration and Power Live」が郵送で届いた。全1曲58分。まだ最初の数分しか聴いてないのだけど…それにしても、これがこのあとどう展開すれば、あの想像を絶する「集団投射…」の10分間に至るのか…と、期待と…

レモンゼスターというレモンの皮を削る器具があるので、これを買おうと思っている。クリームソースとか脂っぽい料理とかの上にレモンの皮を加えると、すばらしい効果を発揮してくれるのだが、これまで我が家では、その用途の際にチーズを卸すときの卸し金を…

川崎駅からジムの施設まで歩く。前回は遠すぎると感じたけど、今回はそうでもない。駅を出て五分前後。わかっていればそんなものだ。しかしわからなければ絶対にわからない。 横浜駅もそうだが、川崎駅も巨大過ぎるだけでなく自由度が低いというか、その構築…

夜は涼しい、肌寒いくらいだ。雨が多い。とつぜん降ってくる。夜の明かりが、ぼやけて細かく分かれて波打ち、アスファルトやそこらの何かが黒光りをはじめる。軒下に人が並ぶその前を、小走りの人と大きな傘の二人連れが身を除けつつ行き交う。 折り畳み傘の…

昨日も今日も、わりとよく眠った。と言っても若い頃のように、長時間がっつりと眠るのではなくて、いつものように朝早く目が覚めてしまって、朝食をとって、その後、また眠くなってきたのに逆らわず少し眠り、日中は買い物などで外出し、帰宅後またうとうと…

野戦病院で、重傷患者は苦痛に顔をしかめ、身をよじり、時には悲鳴を上げたり、泣き叫んだりもする。しかし、ただひたすらじっと耐えて、歯を食いしばり、受苦そのものになって、その苦痛をおもてにあらわさない者もいる。前者は欧米の患者に多く、後者は日…