iPhoneが壊れたのが土曜日だったのは不幸中の幸い。機種変更の手続きのため、最寄りの店を訪れる。

行くたびに思うが、携帯ショップの人は、いつもおそるおそる、少しすまなそうな、遠慮がちな口調で、機種変更という主目的に関連付く色々な提案を投げかけてくる。このプランを付けると、ちょっと安くなるとか、この組み合わせで、これとこれに加入すると、それぞれ毎月いくらずつの支払額で、加えてこれに半年間だけ契約してもらってこの条件を満たして、ペイペイでこれだけ戻ってくるとか、そういう話が、呆れるほどいくつもいくつも出てくる。よくもまあ、手を変え品を変え、そんなことばかり考えつくものだと。その手続きに付き合うことで、ほんの少しばかり月額の支払いは安くなるのだけど、そのためにこれまでの自分が交わした契約履歴は、おそらく数十行とかそれ以上におよぶものになっているのだろう。

それら「プラン」は、きっとひとつひとつが、誰かの考え出した商品で、利用者にとって何らかの意味もあり、仕掛けた側にも利益をもたらすのかもしれないけど、少なくとも目の前のスタッフは、そういうことに関心はなくて、ただパズルの組み合わせを一時的に成り立たせたいという思いだけで仕事をされている。だから丁寧にすべての解約可能日と方法まで教えてくれるし、また来店いただければ解約のお手伝いもしますと言う。必要なのは、その時々での契約実績だけなのだ。

会社は定期的に成績を残さないといけないので、人間はひたすらあるべき成績の姿に、現実を合わせ込もうとする(必要なら時間を逆へ遡りもする)。それは空しいことだけど、働くというのは多かれ少なかれそういうところがある。ただ携帯電話の店にあまり足を向けたくない理由は、それがちょっと露骨に出過ぎているからだ。(いちいち聞いたり断ったりが面倒くさいということの内訳に、自分も共有する疚しさが。)