眠る。起きる。


見上げる。うつむく。読む。


見る。つむる。眠る。


気付く。起きる。見上げる。


見渡す。うつむく。


読む。めくる。読む。つむる。見る。つむる。眠る。


気付く。見上げる。


いる。見る。目が会う。うつむく。見渡す。のびる。あくびが出る。息を吐く。吸う。つむる。開ける。うつむく。見渡す。うつむく。


読む。

給仕が一人、私の方にやって来て、
「何かお持ち致しましょうか、」と言った。
「ウィスキーと冷やしてないソーダ
「それが、ソーダは全部冷やしてありますので」
「水もだろうか。」
「それは水も冷やしてあります。」
「じゃ、いいよ。」
給仕は換気装置が唸る中で足音をさせずに、解らないといった様子で歩き去った。
「チャールス。」
振り返ると、ジュリアが吸い取り紙の色をした四角い椅子の一つに腰掛けていて、手を膝の上に組み合せ、余り静かにしているので私は気付かずにそこを通り過ぎたのだった。
「この船に乗っていらっしゃることは知っていたのよ、シーリアが電話を掛けてくれて。嬉しいわ。」
「ここで何をしているんです。」
ジュリアは何も持っていない両手を開いて見せて、また膝に伏せた。

ちくま文庫「ブライヅヘッドふたたび」 イーブリン・ウォー 356頁


眠る。


起きる。


見上げる。手を膝の上に組み合せて、膝を付けて座っている。栞を挟む。本を鞄にしまう。


あまりにも、静かだ。