テレビで「ずっとあなたが好きだった」の11話と12話を見ていた。13話が最終回だそうな。1992年放映のドラマ。これ、当時もみていました。20年ぶりに再見。賀来千香子の顔。これはひたすら、賀来千香子である。とにかくひたすら、男を見る眼が無いというか、男運が悪いというか、男の趣味が悪い、としか云いようの無い女性が主人公。というか、全登場人物が、全員蟻地獄にはまっていて、楽しかろうが悲しかろうが、結局どっちに転んでも、蟻地獄の安定度は揺ぎ無くて、どうせいつまでも全員が、今のままの不幸なままだろうと、誰も彼もが、すでに納得してあきらめている情況で、醒めて冷えきった賭博場で誰も見向きもしないけど機械的にルーレットが回ってるような感じで、そんな中でひたすら賀来千香子の顔のアップ。賀来千香子、ということだった。賀来千香子という人の顔も、たぶんある意味、蟻地獄にはまっている顔で、その向こう側がないのだ。よくわからないけど、正面だけあって、側面がないというか、奥行きがないというか、立体図が描けないというか、顔が最初からクローズアップしているというか、そういうほぼ意味のわからないことになっている、そういう顔だ。そして、90年代のJJ系?な洋服がとても似合う。超幻想。賀来千香子。1992年。顔。


でもやっぱり風化、ということなのか。僕は風化という現象を実感としてよくわからないのだけど、この二十年の歳月が、このドラマを風化させたのかどうか、そこもなにかよくわからないけど、でもこれくらいの古いドラマをたまに見ていて、わりとしばしば殆ど異様な、ほとんど怪物的な人間が登場することがあるが、そういうときに、ああ、これが風化かな、と思ったりする。異様な人物。もう、こんな人間絶対実在しないし、こんな演技仕事とはいえよくできるなあ、と思うような、それこそ冬彦さんよりもよっぽど狂った人物が一昔前のドラマにはよく出てくる。というか、まあ一昔前のドラマだと、どの登場人物も、みんな少しずつおかしい人だ。世界全体狂ってる感じに満ちている。善も悪もわけがわからない。もう人間の信じる通常の理屈が通らない、軽く筋のずれているような、過去というものの、歪みのおそろしさ。時空が繋がっていたとしても、それ以前にそうじゃない巨大ななじれがある。ねじれというか、非接合がある。接合していない、という状態(接合)が、ある。