歩いていると、少し雨が落ちてきたので、どうかなと思って様子を見ていたら、しばらくして止み、このまま降らずにもちこたえてくれるといいと思っていたが、その後すぐにまた、ぼたぼたとさっきよりもだらしない感じに再びふりはじめて、水が地面を叩きはじめた。道路はたちまち黒く濡れ、景色はかすみ、周囲の子供や自転車に乗ったお母さんたちが逃げ惑う。僕は折り畳み傘を開いたら、強い雨脚の、傘に当たって跳ね返る衝撃が伝わり手に重い。駅前までの距離を十分ほど歩いたら、さすがに足元はずいぶん水に滲みてしまうくらいの強い雨で、あちこちで飛沫が跳ね、水煙が立ち昇り、ものが濡れて、蒸れた匂いが鼻の奥まで突き上げてくる。歩きながら見る前方の景色に透明な縦の線の上下するのが重なっているのを、雨はいつもなぜこういう形をしているのかとふと不思議に思う。一滴が落ちるというのが一つの単位で、それが無数に集まって視覚的にはこういう結果になっているのである。