お伺い

会社を出る。雨になるとしたらいやだな…と思いながら歩く。かなり寒い、けどこうしてコート無しのジャケットだけで歩いていられるのだから真冬ほどではないはず。やたらとライトアップされた、はなやかな殺風景などというイメージがあるとしたら、目の前の景色こそまさにそれだと思う。ドアにカードキーをかざす。かすかに金属の音がして開錠する。壁脇の挿し口にカードを挿すと室内に照明が灯る。ベッドがきれいに作り直されていて、机の下に集めておいたゴミは片づけられている。洗面所もバスルームも未使用状態に戻っている。冷蔵庫から昨日の残りの食材を出す。さっきコンビニで買ったビールや何かと並べる。そんな適当な夕食を摂っていると、端末が久々の知り合いから連絡が届く。ここ数日で何人かから、最近の状況お伺い連絡が、まるでこのタイミングに合わせてくれているかのように次々と届くので、その都度しばらく文面で相手とやり取りして、世間が落ち着いたら、いつかまた会いましょうとか呑みにいきましょうとか、最後は必ず言い合って終わる。いつかって、いつになることやらですけどねえ、そうつけくわえたりつけくわえなかったりする。