ウィスキー

最近は、120mlくらいの小さな水筒に、バーボンウィスキーと少しだけベルモットアンゴスチュラ・ビターズを加えたものを携帯している。毎夜、退社して帰路につく途中その水筒を取り出して、たいへんお行儀の悪い振る舞いであることは承知してはいるが、なるべく目立たぬように密かに速やかに、それを口にする。するとこれが、もうじつに、身体のすみずみにまで染みわたるような、ほとんど覚醒的なよろこびをもたらしてくれるので、それで一日の労苦がむくわれ、明日の事を思い煩わずに、今日一日をせいいっぱい生きた、明日もそうでありますように、と、そんな心の基盤が、身の内に立ち直り整え直されるようなので、この原始的な覚醒感を感じていられるうちは、しばらくこれを飲む。どうせ慣れてしまえば、騒ぐほどのものでもなくなる。そうならないうちに、いろいろと矛先を変えるのが大事。