ハートランド

ハートランドの瓶の、深く沈んで透き通る緑色も、手に持ったときのガラスの重みと冷たさも、つねに好ましくて、栓を抜いて瓶を傾けてきちんと磨いたグラスに注ぐ、その音とともに立ち昇ってくる香りが芳ばしく、なぜかふと、張り替えたばかりの畳の香りを思い出させる。張り替えたばかりの畳の香りなんて、どこで嗅いだのかおぼえてない。大昔の誰かの家で、あるいは法事で訪れた寺の座敷か、いずれにせよ子供の頃、あるいはもしかしたら、この香りじゃないのかもしれないが、だがこれこそがその、根拠不明な過去の記憶を呼び起こす香りで間違いない。