Kate Bush /David Gilmour - " Running Up That Hill " - YouTube

youtubeでたまたま見たケイト・ブッシュのライブ映像。デヴィッド・ギルモアの弾くスタインバーガーがかっこよくて、この音とこのフレージングでこんな風に演奏されると、はげしく魂をわしづかみにされてしまう。

1987年の映像とのことで、だとすれば当時ケイト・ブッシュは三十歳手前くらいか。失礼ながらもっと年齢行ってるように見えるというか、いい感じで貫禄あるというか、ちょっと全盛期過ぎた人だけが醸し出せる高みからの余裕みたいな印象も受けるのだけど、87年ならこのあとに「The Sensual World」(1989年)もひかえているわけだから、まだまだキャリアは続くのだし、それに曲の後半でニコニコと笑うデヴィッド・ギルモアを見返す彼女は、まるでお父さんに褒められるのを期待する小さな娘のようでもあるじゃないか。

歌手である以上、自身のパーソナリティなり身体性なりを元手にしないわけにはいかないし、圧倒的なポテンシャルをもつ歌唱力であるのも間違いないのだけど、それをそのまま私自身に落とし込まないというか、大人とか子供とか男とか女とかからいったん降りて、ベタな告白ではなく虚構として仮組みした私を、そのまま作品に仕立てる。ケイトブッシュはポップミュージックにおいてそういう仕事をいち早くはじめた人物のひとりだろう。

でもそんな仕事の積み重ねとはまたべつに(ある意味でそれを裏切るかのように)、たまたま切り取られた1987年時点での彼女のステージの一瞬において、ちょっとした仕草や表情に、その人に固有としか言いようのない、あるとらえ難さとか深さ、それゆえの魅力が、その背後からふわっと浮かび上がってくるのを見ると、得体の知れぬ感動におそわれるところがある。そうやって何かを続けていくことでしかあらわれないものを見せられた気がする。