youtubeでたまたま見た1997年のフリートウッド・マックの演奏が素晴らしかった。

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フリートウッド・マックのアルバム"Tango in the Night"をあらためて最初から最後まで聴いて、アルバム全体が今でもまったく古びずに素晴らしいことにいまさら驚いた。アルバムリリースは1987年。当時のテレビ番組(ベストヒットUSA)から聴こえてきたのは、"Big Love"とか"Little Lies"だったはずで、それらの曲やルソー風のアルバムジャケットは今もまだ鮮明に記憶に残っている。

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ただしメンバーであるスティーヴィー・ニックスの"Rock a Little"が1985年で、シングルカットされていた"I Can't Wait"とか    "Talk to Me"を聴けば今でも「ああ…これね」と思い出せるのだけど、スティーヴィー・ニックスフリートウッド・マックのメンバーであることを、自分はいつ知ったのだったか。

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"Rock a Little"で両腕を広げてるスティーヴィー・ニックスのジャケ写、あるいは"Big Love"のMVでスカートを広げて揺さぶってる姿はとてもカッコよくて、女性は一時期だけでもこういうイメージに憧れるのは昔も今も変わらないのではとも思うのだけど、当時こういう"ゴス"った感じの女性を、僕もカッコいいと思っていたかもしれない。(スティーヴィー・ニックスとしては、その振る舞いは西部劇とか往年のアメリカ女性の仕草に倣っていたのかもしれないとも思うが…)

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フリートウッド・マックは"Tango in the Night"は勿論のこと、過去のヒット作"ファンタスティック・マック"にせよ"Rumours"にせよ、根底にあるこのわかりやすさは、洗練されていながらも根底にカントリー&ウェスタン由来のアメリカ音楽のそれで、ブルーグラスとかカントリー臭が濃厚なリンジー・バッキンガムのギターは、元々これで良かったのだと言わんばかりに、つねに盤石という感じであるのだが、いやかつては必ずしもそうじゃなかったと、イギリス時代のバンドの面影を今もかろうじてつなぎとめているのが、Key.&Vo.のクリスティン・マクヴィーであり、彼女の存在こそがフリートウッド・マックの長い歴史における柔軟かつ強靭な持続性を担保し続けているのではないか。各メンバーの能力が高く、個性が強く、しかし誰かが突出するわけでもなく、バンド全体として制御され調和している。すぐれたバンドに共通の特性がここにもあると思う。

かつて昔、CDになった"English Rose"(1969年)をはじめて聴いたとき、あまりのブルース臭さで"Tango in the Night"とのイメージとのあまりのギャップに面食らったのをおぼえている。なにしろ当然のことながら、ここにスティーヴィー・ニックスはまだいない。(とはいえクリスティン・マクヴィーはこの後脱退したピーター・グリーンと入れ替わるかのように早くもフリートウッド・マックに加入するわけだ。)で、その後さらにずいぶん経ってから今度は"Rumours"(1977年)を聴いて、これまた全然印象が違うので再び面食らった。

こうして思い返すと、聴くたびに僕は、このバンドの変遷に対してすべて後追いながら、毎度じつにわかりやすい反応を示してきたわけだ。中学生のときに知った"Tango in the Night"と、おそらく二十代の頃に聴いた"English Rose"と、さらに後になって聴いた"Rumours"と、偶然youtubeで見た90年代のライブ(これはライブ盤"The Dance"からの映像)。これらすべてが同じバンドであることに、今さらのように驚く。