「真昼の死闘」


真昼の死闘(ユニバーサル・セレクション第4弾) 【初回生産限定】 [DVD]


始まって、ああこれシャーリーマクレーンが出てんだ。シャーリーマクレーンってあの女優かよーうぇー、とか訳もなくつい思ってしまったのだが、別にシャーリーマクレーンそんな悪くないというかなかなか全然魅力的だと思う。(なんとなく森山良子みたいだけど)冒頭で半裸を見せておいて、すぐ尼さんの黒づくめの格好になって、しかし実は…というこの役どころは本性を隠して終始クリント・イーストウッドを騙して翻弄し、観客をも騙すのだが、でもやっぱり何に扮しようが、シャーリーマクレーンはシャーリーマクレーンにしか見えないとも思うのだが。


しかし中盤、イーストウッドがインディアンの矢を肩に受け負傷したあたりから雰囲気は一挙にイーストウッドのペースになる。イーストウッドは自分が負傷して一時的に体が不自由になっている事を最大限に利用して、シャーリーマクレーンとのおそろしく濃密な時間を延々持続させるのである。その矢の傷は深く、脇のやや上あたりに血に塗れて刺さっていて反対側まで貫通しており、肩甲骨の上あたりから矢の先が見えている。イーストウッドは苦しげな顔で痛みを紛らわすためにウィスキーをラッパ飲みしながら「ナイフでこの矢に溝を入れろ」と掠れた声でマクレーンに云うのだ。マクレーンは云われるがままに、巨大なナイフを鉛筆のような持ち方で持って、細い矢の芯に縦に溝を彫っていく。ナイフに力を込めるたびに矢が微妙に傷を刺激して、イーストウッドは苦痛に顔をしかめる。その後続けて、マクレーンに矢の真ん中辺あたりから後ろをナイフで切り落とさせるのだが、そのときも肩に伝わってくる酷い苦痛にうめき声をあげる。。


そして、彫った溝に火薬を詰め込むのである。…何をするのかというと、火薬に火を付けて、傷口を焼く。そしてそれと同時に、矢の尻を叩いて刺さったままの矢を後ろから引き抜こうというのだ。それらの処置を全部、マクレーンにやらせるのである。マクレーン自身も、自分に課せられている作業のあまりの過酷さ、残酷さ、重要さに怯みまくっている。しかしイーストウッドはやれと云う。絶対やれと。。…残酷でグロいシーンでありながら、猛烈に濃度の濃いエロティシズムが漂いまくるのを感じるのは僕だけではないだろう。苦痛の絶頂に達すると、イーストウッドマクレーンに対して「お前の裸が忘れられない。毎日思い出すぜ」と激しく欲望を口にする。マクレーンはあまりの事に呆然としつつ「今は苦しいときだからそのような言葉も許します」ととりあえずの尼僧らしい受け答えでお茶を濁して、やがてもっと痛い事をするための心がまえをするのだ…。


その後、橋げたに引っ掛けたダイナマイトをライフルで狙撃して爆発させようという企みにおいても、肩の傷が癒えないイーストウッドでは上手く標的を狙えないので、マクレーンの肩を銃座代わりにして、マクレーンの手に銃身を持たせて固定させ、自分は引き金だけを弾くというのの練習をするのである。。マクレーンも異常に一生懸命でけなげである。しかし何たるエロい仕草であろうか。。


この後もマクレーンはイーストウッドから色々やらされて随分な活躍なのだが、後半は如何にもシャーリーマクレーンという感じの快活な調子が出てきて楽しいし、もう細かい話がどうでもいいくらい強力な娯楽的展開が単純に面白くて前半の妙に濃厚なエロティシズムを忘れそうになるほどだ。敵味方入り乱れたまさに戦争映画って感じの様相を呈してきて、爆発と銃撃が惜しみなく繰り広げられる。それで最期はどんでん返しなオチがあって、うわあこれ無茶苦茶面白いじゃんと思ってるうちに映画が終わるのであった。