上昇志向


どうでもいい事をなぜか今ふと思い出したので書くけど、森美術館という美術館があって、六本木ヒルズというビルの最上階あたりにあるのだけれど、今まで何度か行ってて、行くたびに思うけど僕は、六本木ヒルズの最上階の美術館まで上がっていくための、あのエレベータのことをかなりきらいである。下のフロアでチケットを買って、その後エレベータに乗って五十何階まで上昇するのだが、何というか、乗れば乗るほど嫌いな気持ちが大きくなる。あれは本当に、人間の身体にとって問題ないモノなのだろうか?ああいう風な、身動きが取れないまま、微妙に気圧だけを変えられていくようなモノが、死ぬほど嫌いである。いや逆に、嫌いでいないと死ぬような気がする。この前のときなんかは気のせいかもしれないけど本当に心臓に軽い負担を感じ焦ったほどだ。魚市場にうちあげられた深海魚を想像して恐怖すら感じる。ああいう上昇と下降を繰り消す機械の中で、未だかつて心臓の止まった人はいないのだろうか?満員電車並に押し込まれて、そのままみんなでぽかーんと上を見上げて結構なスピードで上がっていく階表示を見つめているけど、しばらくすると、静寂の中で気味の悪い圧迫感が全身を包み始めて、立ってるのがかすかにだるくなってきて、みんなの両耳がいっせいに詰まり始めて、四方八方からごっくんごっくんと唾を飲み込む音が聞こえ始めて、このあたりで僕なんかは、ものすごい嫌な不安感が内面にたち込めてきてしまう。あぁ嫌だなあ、生唾みんなでごくごく飲み込んでるのが情けねえなあ、これってまさにガス室送りの心境だよなあ、早くつかねえかなあと思う。そうすると、あとちょっとで着くときになって、ぐいーっと停止して、下かご乗降中ですとかなんとか云って、上の奴等が終わるまで待たされたりする。そのときの状態が、ああ今地上何百メートルの上で、ぶら下がったままの状況のまま待たされてんだなあ、という想像も相当気分悪いのだけど、やはりそれよりもその時点で結構気圧変化が全身にキテる感じがあって、うわあ早く出せよーという気持ちでいっぱいになる。なのであんまり乗りたくないのだ。でもまた何かやってたら仕方が無いのでやっぱり行くけど。。