点薬


 プールがやけに混んでいたので、今日はもうよかろうと思って早めに上がって帰路につく。十五分くらいしか泳いでないが、まあこれくらいでやめておく日があっても良いかもしれない。帰りの電車でセザンヌを読了する。セザンヌが…ルーブルクールベを見ながら錯乱状態。。少し呆然とした。これって本当のことなのか、どうなのか、なんて事は、たぶん大した問題じゃないのだけど、それにしてもこれだけ読んできて、かえってセザンヌという人間のかつて実在したということが信じられない。セザンヌという名前と、あの絵との関係が、ふとわからなくなる。何点か掲載されているモノクロの挿絵の図版を、ぼんやりといつまでも見てしまう。

 自由が丘から人がたくさん降りて、電車が空いてくるので、座席に座って、目薬をさそうとしたのだが、走ってる電車の中で目薬をさすのはことのほか難しいということを思い知った。冗談じゃなく、目に落とそうとしているのに、落ちた一滴が、まぶたにすらかからず、額や頬や鼻の頭に落ちる。どうやればそんな箇所に?と思うくらい外す。あまりにも外すので、いいかげん笑われそうだと思ってあきらめた。