電車のなかで眠いときは、こんなふうに、どこまでも深く眠ってしまうものだなあ、と思いながら、ずーっと寝ていた。東海道線が、品川に着いてそこから先、なぜかずっと停車していたようだ。後続の電車が遅れているとのこと。それが、いつまで経っても動かない。新橋・東京方面へお急ぎの方は山手線か京浜東北線をご利用下さいとのアナウンスがしばしば流れる。おそらくその何度目かの放送でようやく目覚めて、ふと顔を上げると、車内はがらがらで、ほとんどの人がすでに別のホームへ移動してしまった後らしい。誰もいない車両内で、しかし横を見ると、僕の座っている二人掛けシートの僕の隣には、ひとりの女性が、固まったように座っている。がらがらの車内で、なぜか僕と君との二人だけ、みたいな感じになっている。そのまましばらく待っていたけど、電車が動かないので、仕方がないので僕も席を立って、別のホームへ向かった。なんだ、やはりあなたも行くのか。ここで悠然とかまえている覚悟を決めているわけではなかったのか、そういう視線を、背後に感じてはいない。しかしかすかな、裏切りの罪悪感を感じながら、京浜東北線のホームへ移動して、来た電車に乗り込んだら凶悪な混雑で、狭い空間のなか、醜く圧しあいながら、ついさっきあとにしてきた古巣を、懐かしく思い返していた。