タウンゼント

「エリックならしっかりハグされるのに、なぜオレはダメなんだ?って思ったね。違いはエリックは自分がブルースを選んだことに対して、完全に自然でいられたことだと思う。彼は体の中にそいつを感じていたんだ。オレは違った。オレは黒人ミュージシャンに対してさえ、本当に打ち解けてはいなかった。それは昔からオレが抱えていた問題で、ジミは自分が黒人であることにとびきり敏感だったから、それを感じ取っていたんだろう。(モンタレーのあと)オレは彼からかなりの憎しみと復讐心といらだちを感じた。おそらくはオレの感受性と、黒人と打ち解けられないことが原因だから、まあ、仕方がないかとも思ったけどね」

ジミ・ヘンドリックスアメリカの光と影 -ブラック・ミュージック&ポップ・カルチャー・レヴォリューション」(チャールズ・シャー・マリー)


微妙な問題を率直に語るThe Whoピート・タウンゼント。こんなナイーブな話を、ここまで率直に語るのかという驚きがあり、なんとも複雑な、せつないような気持ちにさせられる。


ここでの発言「黒人と打ち解けられない」は、人種差別的な意味合いではなく、あくまでも音楽家としてブラックミュージックに対する深い屈託を感じざるを得なかった立場からの言葉であることを留意しなければいけない。


それにしても、ジミ・ヘンドリックスはクラプトンとクリームを過大に好き過ぎだとは思う。今思うと、その理由がいまいち判然としない。クリーム時代のクラプトンの何がそれほど凄くて魅力的だったのかを、今の感覚で感じ取るのはきわめて難しい。(というか、全キャリアに渡ってクラプトンというミュージシャンのどこがいいのか?を実感として感じ取るのはきわめて難しい。)むしろ、十年早かったパンクス、The Whoの方が、今の耳にはよっぽどアクチュアルに聴こえるし、ギタリストとしてのタウンゼントは、少なくとも60〜70年代初頭なら今聴いても、圧倒的にカッコいいわけだが。…まあ、もし生きてたら、ジミ・ヘンドリックスはおそらく、パンクは嫌いだとか、言うかもしれませんね。(あんなの、オレがやってたことのほんの何百分の一くらいを、何百倍にも薄めて広げてやってるだけじゃないの??とかなんとか言ったり。)