兵隊はつらいよ


京浜東北線、今朝はまだ空いてる。空席があって、すぐに座れたので、そのまま安らかに眠ってしまう。品川、川崎、鶴見、新子安、東神奈川、横浜への停車時は、ほぼ確実に、一瞬目が覚める。そのたびごとに、隣や向かいに座っている人がさっきと変わっていて、車内も都心よりがらんとしていたり、日の光が床を動いていたりして、先ほどまでとは、別の次元にいるので、ああ…もう変わってしまった、と、自分だけが取り残されたような感じに、いつも思う。横浜からはたくさん乗車してきて、次の桜木町でそのほとんどが降りるとき、僕も一緒に降りる。そこからの徒歩は、まさに行軍である。男女関係なく、黙々と早足で、もたもたしていると後ろから突き飛ばされるくらい、殺気立った集団が黙々と歩いている。兵隊なんて言われた通りに動くだけだから楽でいいね、なんて言われるけどとんでもない。こうしてひたすら移動しているとつくづく思う。前夜、お母さんと別れの挨拶をして、不安を抱えたまま、夜を徹して移動して、寝不足のまま任地へ到着してすぐ配備されて、午前中のうちにズタズタにされてしまう二十ニ歳もいるのだ。僕の斜め前にいた子もそうだ。