根津・御茶ノ水


スカイ・ザ・バスハウスでアニッシュ・カプーア個展を観る。ミニマルの理想的なあらわれを目の当たりにした感じ。エッジの鋭い立ち方、幻覚のように出現している色彩(黒)の、焦点を合わせることのできぬまま膨張するかのようなとりとめのなさに動揺する。とはいえ、自分の目が悪かっただけなのかもしれない。明るいところから急に室内に入って、瞳孔が調整しきれてないままで観た幻覚的なものだったのかもしれない。もうちょっとゆっくり観たかったけれども、ちょっとバタバタして駆け足で会場を後にする。


アテネ・フランセ文化センターでロベール・ブレッソンラルジャン」を観る。僕が今まで観たことのあるブレッソンは「白夜」「やさしい女」だけで、この「ラルジャン」は、それまで作品と、色彩やタッチとしては同系統ではあると思うけれども、それまでと比べてモチーフのかなりの違いに驚いた。とはいえいかにもロシア文学的で、ブレッソンてロシア作家が好きなんだなあとは思った。とはいえ、ロシア文学的なものをまったく別の問題体系に移し変えてしまっているような感じではあり、少なくとも「神様」的なものは「ラルジャン」の世界にはほとんど希薄というか、最初から滅びてしまっているような感じで、もっとどうしようもないもの、そこに存在していて、我々の力では抗えないもの、のような何かとしてあるようだ。それは光とか物質とかと同じように、罪もあるというような感じか。…これだと言葉がきれいにまとまりすぎだ。まあ正直、そんなに面白いとも思ってない、というか、よくわかってない、ともいえるので、また機会があれば再見したい。