恥部

地下一階まで階段を降りると、すぐ鉄の扉があった。取っ手は下がった状態になっていた。手に持って、そのまま引くと、扉が開いて、まるで奥行きのない、いびつなかたちをした狭い空間があらわれた。右手には掃除用具やバケツがまとめて置いてあり、左手には袋に入った紙類だのプラ容器類だのが積まれていて、奥には畳まれた段ボールが層になって積まれていた。静寂にみちた、湿り気のない場なのに、うっすらとだが生ごみの匂いが立ち込めていた。床も壁もコンクリートの肌をむき出しにしていて、ふだんは綺麗に取り澄ました外装をもつビルのまとっている衣装の、そこだけはだけて生の皮膚がじかに露出している感じがした。というよりもこのビルの恥部、ふだんは肌着の下に隠されている箇所に自分がからだごともぐりこんで、それを見ているのだった。