マーロウ

午後、猛烈な雨。水煙が白くもうもうと立ち昇って周囲を煙らせる様子をベランダから見下ろす。このあと暴風域かと思いきや、雨はあっさりとやんで、時折風の音が遠くに聴こえる程度で、ほとんど平時の天候と変わらない夜だった。

チャンドラー「長いお別れ」読み終わった。フィリップ・マーロウは、コーヒーとタバコによって、自分の倦怠や疲労や空虚を表現するようだけど、意外に酒については、何というほどの言い回しが出てくるわけではない。たとえば開高健のように味わいや香りについて嬉しそうに述べるようなことはない。相手を見て酒の誘いを拒否する場面もあり、フィリップ・マーロウにとって酒は、嗜好とか魅惑的な対象というよりも、相手と打ち解けるか否か、その場において気を許せるか否かを示すためにある、それ単体で味わうことに大きな意味はないもの、という感じだ。

おそらくフィリップ・マーロウは、それほど酒が強くないし、とりたてて酒が好きというわけでもないのかもしれない。(周りの連中が揃いも揃って泥酔するヤツばかりだからかもしれないが…)。

何にせよ早めの時間から呑めるのは良いことだ。けっして早すぎることはなくて、今日の我々なんか午前中から飲み始めたくらいだ。まだ明るいうちから開店した店で、客の喧噪に沈む前の時間を使って飲みたいという意見には同感。そんな素敵なバーが実際あるならいいけど。そしてこの夏のうちに久々にギムレットを飲みたい。