ハロー・グッドバイ

録画しておいたNHK【スコラ 坂本龍一 音楽の学校】の 「ドラムの演奏におけるリズム論」(ゲスト:高橋幸宏細野晴臣)の回を見た。この番組は、初回放送時も見たけど、すでに十二年も前のことなのか…。

高橋幸宏がもっとも影響を受けたドラマーはリンゴ・スターであるとの話、なるほど納得だ。リンゴ・スター、どの曲も個性が前面に出まくりだよなと思う。一見普通だけどなかなか他では聴けないあのフィル・イン。

最後に演奏されたYMO小山田圭吾権藤知彦の"ハロー・グッドバイ"に、予想をはるかに越えた瑞々しさと豊かさを感じさせられてしまいやや動揺する。いや、何の変哲もない、ストレートなカバー演奏なのだけど、しかしそれゆえにだろうか、しっかりと役割を踏襲した細野ベースと高橋ドラムが、あまりにも素晴らしい。かつ高橋幸宏のボーカルが、もうポール・マッカートニーを歌うなら、あなたしかいませんよね、と言いたくなるほどの見事さ。相違と同一の間にある隙間の、絶妙なポイントに位置する声と歌い方。こういうのは、才能としかいいようがない。

歌も演奏も、まるでビートルズの、いちばん美味しい養分だけ抽出したようでもあり、同時にその演奏がそのままビートルズ批評でもある。それにしても"ハロー・グッドバイ"だなんて、今更こんな曲をまさか、これほど良いと感じてしまうことがありうる、そんな自分に驚く。