面白い営業のひと


仕事で、とある会社の営業担当と話す。こっちが客の立場です。


そしたらもう、唖然とするほどふざけたヤツなのでびっくりする。っつーか本当に営業ですか?と問いただしたくなるような感じのヤツである。別に、ものすごく失礼なことを言うとか、そういう事ではない。なんか、こういう言い方もアレだが、そこにいる佇まいが、既に異様に胡散臭い感じで(笑)君に掛かったら、どんなまっとうな商談でも怪しい匂いになりそうですね。というくらいの感じ。


何か聞くと、かなり面倒くさそうに答えるのだが、微妙に質問内容とずれた答えであったりする。こちらがその事案に関連した内容で、場の雰囲気を和やかにする意図も含めつつ、話のバリエーションを広げようとするが、そんなの完全無視で、いきなり書面に目を落として、まったく別事案について話を始めてしまったりする。そもそも場の雰囲気とか、最初からまったく無頓着なようである。それを気にする感じも、まったくない。…で、尋問のように幾つかの言葉をこちらから引き出すと、手帳になにやら書き付けて、おもむろに、芯から疲労したと言わんばかりの態度で、ふひーーとため息をつく…。ってか別に、そんなシリアスな話をしている訳ではなく、すごい事務的な、前にも別の担当と何度もやり取りしてるのと同内容なんですけど…。


すごいのは、この営業くんの、これらの数々の振舞いが、こちらへの悪意とかそういう意図的なだったり戦略・作為的なところからのものとは別のところから発動している事で、もうこの人は、生まれながらにこういう人なのだろうと感じさせられるような、超・天然パワーに満ちている点である。だから、こっちも「すげーなー」と思っているのだが、別に不愉快な訳ではないのである。なんか独自なリズム感の自分をそのまま社会にぶつけて、何か問題でも??と言って平然としてる感じ。うん。問題ないですよ。


雑談的な局面に来ると、そいつはかなり嬉しそうな表情で、ものすごい勢いで自分のことをしゃべりだすのである。それが、正直言うと僕なんかには相当どうでも良いとしか思えないような話なのであるが、僕がどう思ってるかとかは、当然まったく問題ではない。自分で自分の言葉を反芻するように、行きつ戻りつ、がーーと喋った後、またすごいつまんなそうな顔にもどって、「・・・じゃあこれについてはどうします?」とか言って仕事に戻るのである。(笑)・・・んで、業界内部の専門的な話とかが、ところどころ散りばめられる。これらも、相手の目をくらまそうとか、そういう意図とは別の、なんかやっぱり自分で反芻しているかのような感じでぽろぽろ話される。すべてが、判りやすくない。全体が意図不明である。・・・なんか今思い返すと、雑談で出た話は、どう考えても作り話だろうとも、思われる。証拠は無いが。。


でもなんか、こういう人との邂逅が、すごい久々な気がして、不思議な事にちょっとこっちも嬉しくなってしまったのであった。別に、そういう事でも楽しく受け入れる僕は、すごい心が広いヤツです。とか云いたい訳じゃないので誤解なきよう。というか、はっきり言って僕は超・こころが狭いです。仕事なんて1秒でも速く終らせて然るべきとの考えがデフォルトの人ではあり、無用な障害は避けたいのだが、やっぱ会社員っつーのは、ほんとうに同じパターンの人格と、同じパターンの事案をやり取りするのが日々義務付けられた人種な訳で、そんな日常において、突如として現前するこういう突出キャラとの出会いは、それだけで、すごい変わった味の珍酒を直に血管に注入されているような、刺激的なもので、ちょっと良い気分にもなりかけるのであった。



追記:あと、なんだかんだ言いながらも、話されてる中心の事案について、その営業くんの中に、ほんと最低限の責任とか愛着とか、そういったものがいささかではありながら感じられた。というのが、結果的になんとなく悪くない印象となった理由の、大きなポイントと言えよう。