昔は、チャンスが一度きりしかなく、一度試せば、上手くいこうがしくじろうが、それっきりの事でしかなくて、極端な話、自分の人生を、そのワンチャンスに賭けてしまうような事さえ普通だったのかもしれないが、今は、そういう事は少なくなった。今はもっと、判断材料がたくさんあるし、事例も多く、体験談もそこらじゅうで語られており、そういうのを元にした想定もしやすくなっている。そうなってくると、自分という存在も単なるワンチャンスを狙う身ではなく、もう少しリソースとして分散できて、この局面にはこのくらいのパワーで対処、みたいなちからの事前調整を可能にするような余地さえ生まれる。
今の世の中が、流れの様子を見ること自体を奨励している。今が様子見すべきとき、という意味ではなく、可能な限り、できれば永遠に様子見すべきだ、と言っているように思う。もう人生みたいな現場に参加すんなと。そんなのこそ幻想だろうと。とにかくグラフの推移だけ集中して追っかけてろと。そっちの方を信じろと。お前がそうやってモニタを見ている、その姿そのものに、今の時空と響きあうものがあるんだと。その様子をじっと見ている姿こそが、何かに取り組むにあたっての、もっとも、もっともらしい姿に見えさえもするんだと。
