Windows


いつのまにか、寝てしまっていたことに気が付いた。なぜなら今、起きたからだ。ある程度の時間、そこそこ深く、眠っていたんだということが、アタマの中の回転の遅さやまどろみの感触や細かな意識に一々重さと粘り気が残る感じで察せられた。時計を見ると午前2時をまわったところであるから、おそらく3〜4時間は眠っていたのだと思う。上半身を起こし、そのまま立ち上がると、軽い貧血感と身体のふしぶしへの痛みを伴って、やはりずいぶん深く眠っていたのだということをあらためて思う。


さっきまでずっと、夢を見ていて、その内容をまだ鮮明におぼえているので、そのことでも書こうかと思う。でもとりあえず冷蔵庫に何か無いか探して、ビタミン・ウォーターという名前の、250mlくらいの小さなペットボトルがあったのでそれを、一気に飲んで、冷たさとかすかな甘味が体内に沈殿していくのを感じながら、自室に行ってPCの電源ボタンを押す。マザーボードに通線した瞬間の「ギョギョギョ…」という唸り声のような音が聞こえ、そのあと電源ユニットのファンが耳障りな高周波寄りの音をたてて回りだす。この音は数十秒かあと、OSが正常起動すると、自然に治まる。


飲み干した後の、空のペットボトルを捨ててから、再び自室に戻るとすでに、Windowsの待ち受け画面が表示されていて、暗い部屋の中全体が、鮮やかなブルーに染まっている。まだ明るさに慣れていない目をここで一挙に光に馴染ませるために、卓上の電気スタンドも付けて、部屋の外にまで溢れたその青い光を、蛍光灯の白色でうちけす。白いカーテンと壁の一部の表層のテクスチャーが、くっきりと明快な細部をともなって、白と青の交じり合った光の中に浮かび上がり、もう自分が眠りの中ではない現実の層に居るのだということがあらためて自覚される。