受読


今日は一日、本を読んで暮らした、といったような感じの一日にしましょうとなって、食べ物は色々あるいただき物や冷蔵庫の残り物とかを食べて、酒ももらい物がいっぱいあるのでそれでだらだらしながらずっと寝そべって読書でもして過ごしましょうということになって、しかし結局あまり本は読めなかった。飲み食いはずいぶんした。少し寝た。十五分くらい買い物に出た。あとはつまらないテレビを見たりウェブを見たりしながらだらだらしただけであっという間にこんな時間に。本は「読もう」と思って読んでもなかなか調子が出ないというか、何か妙に調子が狂う。普通なら「読もう」と思って本を手に取って読みはじめて、そのうち次第に当初の「読もう」が、すーっと消えていくもので、その後はむしろ「読むのやめよう」という気持ちを常におぼえながら読み続ける感じの方が、読書時の気分として自分に近しい。読み始めて、ぐっと集中して、自分の意志でぐんぐん読み進めて、最後まで読了、面白かった、みたいな、自分の場合、そういうのはほとんどありえない。どちらかというと「なんか読んでる」「まだ先を進むつもりか」「でもこんなことはいつまでも続かない」「早く立ち上がって本来のことをしなきゃ」「今こうやっている事が正しい筈がない」といったような、複雑なぼんやりとした不安感というか、決してリラックスしてはおらず、集中しやすいコンディションでもなく、むしろ心配事が常にぼんやりと頭を占めているような、大切な用事の途中で図らずも寄り道しているみたいな、何がしかの気がかりを抱えた落ち着かぬ状態のときみたいな、そんな状況でしかしそれでもなぜか読書を打ち切るだけの力もでないというか、現状のモードを解除するのが面倒くさいというか、別にこのままでもいいやという投げやりな気持ちが勝ってるというか、もうここまで来て妙に勢いがついているところに乗っかっているだけだし、みたいな、そんな感じで、結果的にはずるずる読み続けてしまっているような感触が自分にとっては読書の感じなのだ。休みの日とかだと、つまらないテレビを見たりウェブを見たりというのがまさに「こんなことはいつまでも続かない」「早く本来のことをしなきゃ」「今こうやっている事が正解な筈がない」といったような思いにうってつけなので、終わってみればむしろそっちに時間を割かれてしまうのかもしれない。