大ガラス


先日紛失したiPhoneがいま、手元にある。親切な人が警察に届けてくれたのである。それで警察から電話会社を経由して、携帯電話拾得のご案内という連絡をもらったのが先週末のこと。受取りは平日のみとの事だったので、今日会社を午前半休して警察署まで行って受取ってきた。


受取ってびっくりだったのは、顔が映り込むほどツルツルに黒光りしていたはずのiPhone筐体裏面に、まるでクモの巣が張ったかのような、ド派手なひびが、細かいのから太いのまで白銀色に輝きながら縦横無尽に盛大に走っていたこと。ちょっと割れちゃいましたねーとか婦警さん簡単に言うけど、これちょっとどころじゃないよ。すさまじいまでのひび割れ方で、一瞬絶句してしまった。でも悪いのは自分。あたりまえ。しかしとりあえず電源入れてざっと触ってみて、どこも異常なく正常稼動しているので、それはそれで、また不思議な感じだ。カメラも大丈夫みたい。レンズ周りのガラス部分は氷をかち割ったみたいなひびにまみれて真っ白なのに。。しかし、ここまで外傷酷くて、中身が完全に無事とはね。


家に帰って、とりあえず損傷面全域にジェルメディムを水で薄めたものを筆で塗布してみた。ひびにメディウムが浸透して乾燥して、まあまあしっかりと定着してくれて、これで細かい欠片がぽろぽろ剥落するような事にはならなくて済みそうだ。しかしジェルメディム特有のツヤ消しなざらついた感じがあまり良くなくて、しかも微妙な筆の刷毛目も、見れば見るほど気になる。なので今度は細かめの水ペーパーで磨いてみた。これは大成功で、表面のジェルメディムは皆削り落とされてしまったのだが、ひびの凹部分だけは残るので結果的にひびの生々しい亀裂感とガラスの透明感をどちらも可能なかぎり生かすことができた。ひとまずはまあ、これで良いだろう。いやむしろ、この方がずっと良い。事故に会って良かったです。ひびが入って以前よりもずっと良くなりました。と、デュシャンがカバンヌに話すように自分に言い聞かせて独りで満足した。