Over Time


さて、何か書かなきゃ。何を書くのか。いつも思うけど、なんで今書かないと、ダメなのか。書きたいときに書く訳にはいかないものか。でもそうもいかないのだろう。まあ書くか。始めよう。最初のセッション。15分目安の刻みでお願いします。さあどうぞ。…じゃあ、朝起きるところから、始めるか?はい。今日です。朝が来た。起きました。起きて、眠くて、ソファーに寝そべって、二度寝した。そしたらテレビの、わたし犬犬の、音しか聴こえなくてどんな犬が映ってんだか、見えなかった。その後で、買ってきた甘いジュースを冷蔵庫から出して飲んだらちょっと目が覚めたのだが、あれ?もしかすると甘い物って、目を覚ます効能があるのだろうか?糖分には身体を覚醒させる効果があるのか?糖分が、脳細胞を活性化させて神経を昂ぶらせたりとか、そういうことがあるんだったっけ?そういう気分かもしれないような、軽い作用をおぼえて、熱帯雨林のジャングルの中で僕が、ようやく少し目が覚めた。着替えて、出かけた。読んでる途中の「自動巻時計の一日」は佳境。明日には終わるか。終わっても感想なんて、書きたくない。とにかく一ページごとにすばらしい。どうしようもない。これはもう、書いてある内容がどうのこうのではなく、この押し寄せては引いて、また押し寄せては引いての、ある流れというか、ある抑揚。そのリズム。それだけなのだ。ああ、そうそう、こういうのが良いのだとつくづく思う。こういう風にしか言えないこと、こういう風にしか書けないことというのが、そういう風に書いてあるのだ。って何だか意味がわからない。でもただひたすら納得という感じ。この感じに触れてるだけで満足だから。いやこれ、本当に、今自分の中で、何の比較対照も思い浮かんでないけど、でもああ、こういうのはいいなあ、こういう小説がいいんだよなあとつくづく思ってしまう、そういう小説である。まあもちろん今のところは、という事なのだが。気分はどうしても変わりやすいので、明日になればまた、ひょっとすると別の何かに夢中になったりもするのだが。


と、ここまで書いた。…いつものことながら、面白くないねえ。いつものことだねえ。よくまあ、毎日毎日、おんなじように、毎回毎回、飽きもせず書くもんだ。でも、ある意味、これ以上書いたら結局、燃費の無駄なんだろうなあってのは、ある意味わかる。燃費計算し始めたらそれこそ終わりだけど、でもその計算内でつまらないことを毎日書き続けると、そのうちなんか凄い化学変化がおきる可能性もなくはないかもしれない。それを待ってひたすら地道に頑張る手もたしかにある。まあでも燃費…。こういうのは結局、人によるというか、体質にもよるのだろうが、逆に燃費効率が悪化してはじめてやる気になるというか、ガス欠寸前ではじめてその気になるというのは、どうしてもある。僕なんかはそういうタイプ。でもこれって、向こう見ずな無計画な性格ではなくて、むしろその逆で、人一倍残り時間とか燃料の残量とかに敏感だから、それでレッドゾーンに入ると逆上して手がつけられないくらい暴れるっていう、かなり浅はかなタイプなのだが。でもそうはいっても、この世にある結構面白い色々なものは、意外と人格的には下らなくてどうしようもない浅はかなヤツらが作り上げているというのもまた事実なのだが。まあそんな事はべつにどうでもいいというか、とりあえずもう、今からやっても遅いよ、もう絶対間に合わないよとみんながいい始めて、やっと走り始めるのが、自分の場合を言わせてもらえば、そんなノリが子供の頃から好きだった。ある意味最低の出来レース。プレイヤーも観客も自分独りだけの、完全八百長試合を演じる。


後でこっそりと戻ってこようと思っているのだ。書くと後で読める。これはものすごいことだ。戻って、誰もいないひっそりとした場所にこもって、それを読むことができる。過去の自分が書いたものを読むことは、なぜこれほど楽しい事なのか。僕はいつもそう思う。そう思わない、そういうのが嫌いだという人も、ずいぶんいるらしいけど、なぜなのか不思議だ。僕はたぶん、自分の人生において、過去の自分の行為の痕跡を鑑賞するのが一番楽しい。それ以上に楽しい事がそうない。…ので、だからこそ、面白いものを作りたいのだ。最近は正直、全然つまんないのである。なんだか、言葉が自分を離れてくれないのだ。何週間前のものも、何ヶ月前のものも、まだ生臭くて、読んでてウンザリなのだ。これだと、さすがに毎日苦痛なのだ。もっともっと、異常に新鮮な、異常に白けた、異常に突き放された感触を味わいたいのだ。それだけを求めている。書いたものが、自分を突き放して、そこにあるという感じ。それだけ求めているのだ。おそらくこれが、文章を書く唯一にして最大の目的である。目的というよりは欲動である。


まあ何とでも…書くのは書く。調子にのって書いて書いては結構な事だが。