氷菓


今日はたしか、一度朝七時前に起きて、その後すぐ二度寝した。次に起きたら十時過ぎ。かなりよく寝た。とても生暖かい風がひっきりなしに部屋を通り抜けていく。涼しくはない。温風である。扇風機の風も外からの風も、皆一様に風で、それらが室温を下げてもくれないし身体の表面を乾かしてくれることも無い。部屋に干してあった洗濯モノは半日も経たないうちにからからに乾いた。たたまれ折り重ねられたまだほのかに温かみを残す衣類に顔を近づけてみるといい匂いがするのでしつこくにおいを嗅いでげらげらと笑った。一日中死体のように床に寝そべって過ごした。少し酒を飲むと少しだけ眠ってしまって、読んでいる本が手からとりこぼれてばさっと床に落ちて、はっとして本を拾い上げて再び読み始めた。それを何度かくりかえしていた。いま、ガリガリ君の梨味を食べた。これははじめて食べた。ガリガリ君なんて食べるのは何十年ぶりかと思う。しかも梨味は初めてだ。そんなものまであるのか。そしてこれが思いのほか美味い。ほんとうに梨の味がして、うまい。そしてたいへん、冷たい。食べ終わって、じつにさっぱりした気分になる。このガリガリ君だが、近くの店で買って歩いて家まで帰るまでの、ほんの5分かそこらで、すでに原型をとどめぬほど完全に袋の中でグシャグシャに溶けてしまったので、仕方なくそのまま冷凍庫で再び固まるのを待った。さっき出して袋を開けたら、一度溶けたものが袋の形状になっていびつな形で固まっていた。氷菓子は美味いものだ。缶ビールの缶の周りが水滴でベタベタになって生温くなって最悪だ。食べたらすぐに捨てられる方がいいのだ。三品くらいで充分だ。火加減でずいぶん違う筈だ。もういっそのことジュースなどの甘いものが美味しいが、後でちゃんと吹いておかないとそこらじゅうにぽたぽたと甘いものがこぼれてそのまま放っておくとベタベタだし蟻もくるかもしれない。