窒息


今日はなぜか、上を見るとそのまま息が止まってしまう人の話ばかり思い浮かべていた。


分厚い雲に覆われた空を見上げていると次第に呼吸困難になってしまう。これはまずいと思って、慌てて近くのベンチに腰掛けて、ふーっと一息つく。危なかった、もう少しで窒息するところだった。とりあえずあたりをきょろきょろ見回して、しばらくそのまま身体を休める。おだやかな風がゆっくりと流れている。


その場に寝そべって、上を見る。上は、空だ。分厚い雲に覆われた空。寝そべって空を見上げたら、もう終わりだ。全身が一気に弛緩して、胸の鼓動だけが早鐘のように波打つ。


公園の芝生に、寝そべったまま、ぐるりと見渡す。分厚い雲に覆われた空。真っ白な雲。視界すべてが分厚い雲に包まれている。白い空が一様に広がっていて自分を包み込んでいて、圧迫感で息が苦しい。背中が下から芝生に圧されている。空が上から身体全体を圧迫する。


呼吸がうまくいかなくなり、顔がうっ血して目の周りが温かくなってくる。心臓の鼓動がはやくなって、胸が膨らんでくる。身体全体がいっぱいになってくる。


気道を確保する。身を縮めて横を向いた。冷たくて新鮮な空気が、どっと体内に流れ込んできた。脈拍が下がり、腕や足に血液が行きわたっていくのを感じた。視界が元に戻った。隣になぜか橋東の彼女がいた。