蜜柑


土曜日の朝は、寒くて、雨が激しかった。傘が風に煽られて傾きそうになるのを、必死に抑えた。指先が寒さで痺れて感覚が麻痺していた。冷たい雨である。冬の雨はつらい。歩いていて、陰惨な気分になってくる。今を耐えて、今に開き直るしかない。今の気温を知りたい。iPhoneでは今この場所の温度がわからないので、温度計を買って常に持ち歩こうかと思う。今日も、朝の北風が身を切るようでものすごく寒かった。帰りもやはり寒かった。一日中、手が悴んでいた。すきま風が足元を通り抜けていき、両足の爪先は氷の中に浸けたようになっていた。それにしても、帰る途中で蜜柑を買えば良かった。買うのを忘れていた。夜になって、酒を飲み続けていると、喉が乾いてくるので、そういうときに、蜜柑を食べる。あと風呂上りにも蜜柑を食べたいと思う。風呂から出て、眠るまでのあいだに、酒を飲まないで過ごすことが久しくなかったので、たまにそうやって飲まないでいると、高校生の頃の時間がふいに思い出されてくる。酒の匂いがしない夜更かしの感じが懐かしい。当時、今のように、インターネットを見ていたわけではないのなら、いったい何をしていたのだろうか。でももしかすると、当時から、頭の中で、ほとんどインターネットにつながっていたも同然だったのかもしれない。