あらくれ


 さて、水泳。クロール泳法で悩みはじめて、今週は結局、ウィークデイのほぼ毎日プールに通ってしまった。

 2ビートを繰り返し練習していて、しかしこの倍のキックを打つというのが、どうしても感覚的に掴めなくて、色々と試行錯誤して、最終的に自分なりにいちばん落ち着くキックのパターンが見え始めて、でもこれ、いわば3ビートってことだろうと思って、そんな泳ぎ方があるのかどうかもよくわからないけど、これがいちばん身体が自然に連続して運動するから、まあこれでいいんじゃないかなあと思いながら泳いだ。

 後で調べたら、何のことはない、それこそが、まごうかたなき4ビートだった。

 何かについて書くのではなく、何かが、書かれた。書かれていたいのである。つまり、書きたくないのだが、しかし、それが書かれたい。それが書かれていたいというこの欲望のこと。

 たとえば、小野里さんのことを書くとき、小野里さんがまるでモチーフのようになってしまっては駄目なのだということ。

 家に帰って、遅い夕食を。その後、ずいぶん前に録画した成瀬の「あらくれ」を観る。けっこう長い映画で、終盤、睡魔に耐え切れず、DVDを止めて寝る。翌朝、続きを観たら、残り15分足らずで終わってしまった。

 久々に成瀬巳喜男を観たけど、やっぱり相変わらずの陰鬱さで、あー、ほんとうにうんざり。という気分になる。だったら観なければいいのに、観るのである。なぜか高峰秀子が若く見えた。57年の映画だから別に若いときの出演ではないのだが。高峰秀子の顔は、広末涼子に似ているかも、と思った。

 三浦充子との乱闘シーンはなかなかであった。両腕を振り回してぼこぼこにして、その後で立ち上がって足蹴にするところの執拗さとか、かなりいい。乱闘が始まった瞬間、外は雨で、これはもしかすると、最悪の場合、二人縁側から庭先に転げ落ちて泥まみれみたいな展開もありえるか、いや、まさか、さすがにそれはないだろう、しかし、という不安とも畏れとも期待ともつかぬ思いにとらわれながら観ていて、最終的にはぼこぼこにされた三浦充子のみ裸足で庭へ逃げるという、とりあえず納得(?)の展開になった。

 そう。雨が、この映画は雨が降っているシーンが、なかなか良かった。

 今日は雨がよく降った。