頭の中で、考える。明日買うワインを決める
歩きながら、頭上の雲を見る
甘味すなわちボリューム感と、酸味とのバランス
巨大な、視界前方の七割方を占める、饅頭のようにどっかりとした、ふてぶてしいかたち
さわやかさ、やさしさ、やわらかさ、まろやかさ
"ふち"のあたりだけが輝くような純白で、少しずつ色が変わって、内側全域が灰色の
軽やかさ、スマートさ、ふくよかさ、こくのある感じ
その色が、乳白色というありふれた云い方が、ことさらふさわしいような
華やかさ、香ばしさ、ふくらみのある、清涼感、スパイシーな、熟成した、そのようなブーケ
たぶん、その奥には何もない、単なる表面そのものみたいな
果実、花、ハーブ、樽、ミネラル、そのものたちらの、アロマを感じさせる
とても薄いのに、まったく光を通さない膜みたいな
そういう灰、その、色面としての灰色と呼ばれる色
色と呼ばれて、かろうじて人から認めてもらえている、その在りかた
しかしもし、本当にまったく光を通さないのであれば
それが薄いか厚いかも、見ただけではわからないはずだから
その意味では、薄いと感じるだけの光の透過を、そのときだけ感じていた可能性もあり
その限られた時間のうちでの、ずるがしこい立ち回りの跡を、今更ここで云いたてはしないが
なにしろそのような、塗りつぶされたようでありながら
厚みのまったく感じられない
石灰を多く含んだ
白亜質の土壌特有の、火打石のような芳香
白く、細かい綿のようにちぎれた破片が、風にのって流されていく
やがて、雨が降り出す
土が湿り、真の黒になる