納期は?いつにします?と急かして、期日だけ言わせて、だそうです。その流れで行きましょう。と後ろから言って、じゃあ僕はこれで。失礼しますと言って、逃げるように場を立ち去る。33分の電車に乗らないと間に合わないと思っていて、乗ったのは40分だったので、その場で到着時間を確認したら、新宿湘南ラインが使えるので、なんとか間に合いそうだとわかって安心した。横須賀線に乗ってる人々と、東海道線に乗ってる人々は、なぜ少し違った感じがするのか。それはたぶん、千代田線に乗ってる人々と日比谷線に乗ってる人々とのあいだに感じられる違いと同じようなもので、銀座線に乗ってる人々と半蔵門線に乗ってる人々とのあいだに感じられる違いとも同じようなものでもあり、それは違いというよりは、むしろ共通する感じと言い換えてもあまり問題ないようなものでもあるかもしれない。だいたい同じ方向だけど、立ち寄り先は別。ということで、だから同じと言えば同じであり、違うといえば違う。というか、両者が交差する駅があって、そこでお互いが交じり合うとき、その駅やその駅から先の電車の中に、何か異質なものが混じりこむことがある。日比谷線で言えば、霞ヶ関もしくは日比谷か。日比谷なら、広尾から乗ってきて六本木で降りていく水商売の女たちが、千代田線の湯島駅なら、その階段を降りていくときにすれ違う、これから出勤するといった体の女たちの残り香のようにそこの空気に混ざり合い、攪拌される。銀座線で言えば、表参道か。しかし今週は涼しかった。今日の朝も、じつにいい夏の日だと思った。日差しは明るいのに、空気の内側に少しひんやりとした冷たいものが含まれていて、肌触りがいいので歩いていて快適なのだ。横須賀線なら品川、横須賀線なら、むしろ横浜か。この自分が、どこでもない人間だからか。いや、この自分は、単なる足立区民だった。そういえば、これを書いている今日の夕方から足立区の花火大会だった。それにしてもそれも混むことだろう。足の踏み場もないようなことになるのではないか。ピクニックシートなど敷けるものだろうか。そのとき、明日が足立区の花火大会だと顔に書いてあったほどだったのかもしれない。51分発の横浜から、新宿湘南ラインとは、恵比寿にも停まり、渋谷にも停まるのか。だったら恵比寿の店に行くことも容易じゃないか。横浜から、あと30分くらいで行っていいか電話で確認できるのだから、その方がいいではないか。昨日新宿で、いい店がどこかあるか聞かれて返信したら、個室じゃないとダメだから却下されたが、では今度、あらためて二人で行ったらどうか。新宿に着いたのが23分頃で、すごい人混みでまともに歩くのも大変だったが、人を掻き分けるようにして靖国通りの居酒屋に着いたら、まだ一人しか来てなくて拍子抜けした。これから、さあ、ある種の緊張感につつまれた会になるのか、と思ってたら、その後もう一人来て、あとはふつうの飲み会になった。そうだ今思い出した。ぜんぜん大したことない店だったのに値段だけはいっちょまえだったので、会計のとき、へえーと思って呆れたのだった。