平和でのどかな日々が続くと、人はただ漫然とそれを享受しているだけでなく、見境なくどこまでもだらしなくなっていき、仕舞いにはくだらない考えを持ったり、つまらない行動を起こすようにも、なるからなあ残念なことに。これは苦い真理だ。品位や倫理性というのものは、ある程度、厳しく限られた条件下での環境からしか、生まれてこないものかもしれないな。まったく、必死の思いで勝ち取った権利、とか云っても、そのありがたみが、残された人々の心のうちに、いつまでも残っていられないのであれば、こころざしも成果もいっそのこと、なるべく早めに消え失せてしまうほうが、むしろ良かったなどということにも、なりかねない。ことほどさように、人心の中においても世の中においても、その情勢とは、図りがたくむずかしいものなので、どれだけ良かれと思ってお膳立てしたとしても、それがまったく、いったい誰にとって何がどういいのだか、あるところまで来てよくよく吟味してみても、そこからは金輪際、まるでわかったものではないな。