ベルトルッチ暗殺の森」をDVDにて。バターをふんだんに使った、こってりとした、とてつもなく高カロリーな、いまどき誰も喜ばないような、ぎとぎとの、とても最後まで付き合いきれないような、過剰に着飾った古めかしいお料理。やっぱり、食べるならこれだね、という感じの、せっかく同じ金払うなら、このくらい重厚なものを食いたいよね、という感じの映画。


ファシストも生まれたときからファシストではなかったので、それはおそらく、ムッソリーニだろうが誰だろうが、ヒトラーさえ、そうである。この、秘密警察に属する主人公のおそるべき受け身な態度、視界に入ってくる出来事を見守るだけの視点で、事態が進行していく過程が、ほぼ他人事とは思えなくて、ああ、僕も今こうして連日、仕事していて、ばかな奥さんと恩師の先生とその妻と、護衛の男と、どいつもこいつも今この自分の身近にいる周囲で、ネコの子みたいに、ごろごろと何十人も絨毯の上で寝そべって遊んでいる子供たちを見るようで、それといったい何が違うのかわからず、眩暈をおぼえながら、ほとんど琴線触れまくりの緊張感を感じつつ観続ける。


これ、今、都内のホテルとか、商業施設の平日午前中の異様に閑散としたロビーとか、ビジネスビルのエントランスとか、上手くゲリラ撮影すれば、同じような映画が作れるんじゃないかと思えて仕方なかった。主人公は今なら、普通にサラリーマンでいいと思う。映画をたくさん観てきた人にとっては、この映画はあまりにも昔だろうけど、僕にはこの映画は、あまりにも今過ぎる印象に感じられる。