宮本(ドラマ)

ドラマ「宮本から君へ」(真利子哲也 2018年)全12話を見る。かなりよそ見しながらの「ながら見」で、あまりきちんと見ていたとは言えないが。独善的な自分ルールで自分自身をがんじがらめに縛って、仕事や恋愛で周囲を巻き込みつつ大騒ぎして、何しろ本人にとっての「手ごたえ」が重要、今ここにあるリアルさだけを確かめたいという、まさにリミッターの外れた衝動優先な若者思考の全面展開で、いかにも(昔の)青年誌連載の漫画っぽい。そういうドロドロに自己制御不能な若者を、池松壮亮が全身を使って濃厚に演じる。原作の漫画は一九九〇年頃の作品らしく、ドラマの舞台背景もやけに古めかしい雰囲気があり、主人公の勤め先の会社はいかにも昔っぽい雑居ビルで、今どきのセキュリティ感がいっさい感じられないオフィス、机上にパソコンなどまったく存在しないし印刷屋の版下とかも完全アナログ、しかし人々の手元にはスマホや携帯がふつうにあるという不思議な世界。主人公をはじめ登場人物の喫煙率高いのも昔っぽい。撮影場所は主に御茶ノ水、代々木、飯田橋、浅草橋など、ほとんど総武線沿線で、たしかにこのあたりの景色は昔から変わってないような雰囲気がある。会社の上司や同僚との距離感がほとんど昭和のモーレツ社員みたいな公私べったりの濃厚な密着感。営業と客先担当者の子弟のようなつながりとか、居酒屋は大騒ぎのサラリーマンでぎっしりとか、バーのカウンターでギムレットとか、先輩や上司のいかにもわかった風な先輩風の吹かせ方と面倒見の良さとか、敵対する人物の絵に描いたような憎々しさとか、色々とごった煮の混在具合が妙な感じ。最後は何もかも失敗に終わるバッド・エンドなテイストで、しかしそこに苦くとも望んでいたはずの手触りがかすかに感じられたか?…みたいな終わり方。エンディングテーマの、MOROHAの「革命」という曲はけっこうおもしろい。