自由席でいいやと思って、買った切符を改札に入れて、発車時間を見たら二、三分後にひかり何号だかが出発なので、それに乗った。僕の記憶では、新幹線のひかりは東京名古屋間をノンストップで行くやつだったのだが、それはもう何十年も前の話であることに乗ってから気付いた。少なくとも、のぞみ登場後はもっと頻繁に、浜松やら静岡やら、ちょこちょこと停まるようなやつになってしまったらしい。十分後ののぞみに乗るのが正解で、予想よりも三十分遅く名古屋に着くことになる。しかたがないから車内販売の缶ビールを買って飲む。缶ビール。BeerCan。あんまり高くないな。日比谷野外音楽堂の前で買た缶ビールが四百円とか五百円とかしたのをなぜか唐突に思い出して、そんなものかと思ったら、二百幾らだった。いや、もう、そういうことをすぐ忘れてしまう。あー、結局、こんなものを飲むしかないのだ。まあ、そんなもんか。新幹線っていうのは、いつもそうだけど、とくに最近は、ただ坐ってるだけ。つまんない。会社のミーティングスペースみたいな、何の特徴もない殺風景な、ある意味すごい安普請な感じのする場所だ。名古屋に着いてから、近鉄特急に乗り替えるのだけど、乗ってるだけなら、近鉄の方がよっぽど快適である。まさに、旅行気分というか、それこそ色々、駅弁だのサンドイッチだの酒だの菓子だの買いたくなるような、これから楽しい田舎に行くのだ的な高揚した気持ちになる。新幹線よりも、空いてて自由だし。でもまた、缶ビールを飲む。ビールばっかりだ。こんなにビールばっかり飲むことは最近あまりなかったけど、なんか休みっぽい気分になるな。でもさっきからなんでこんなに飲んでいるのか。これから倒れて入院してる父親に会うんだけどな。