でこぽん


でこぽんは美味しい。冬のうちから売っていたけれど、ようやく最近値段もこなれてきて、お求め安い価格になってきたので買ってきて食べるのだが、これがほんとうに美味しい。なんという甘味だろうかと呆気に取られるほどの美味さ。ただ単に甘ったるいだけなら、これほどさわがないけど、酸味と甘味の絶妙なバランスというか、ちょっと言葉で説明するのが難しいくらいの、おそろしく立体的で複雑な甘酸っぱさで、果実というのが、こんなに美味しいのは、はるか昔からそう定められているのだとしたら、これは人類にとって最大の恵みの一つであるなと。まあ、なにしろこれは美味しい。ほんとうに、でこぽんは自分がこんなに美味しいということを知って生まれ育ってきたのだろうか。己が身を喰われて、これほどまでに喜ばれるなんて、お前はこの世にみのることができて、ほんとうに良かったな、ということなのか、それともそれはもう、でこぽんにとっての生が終わった後の出来事に過ぎないのだろうか。