甘い生活


フェリーニ甘い生活」をdvdで観る。これが初見。堂々とフェリーニだった。ちょっと引いたカメラで、人々のわいわいがやがやしているところを傍観視線のように撮る感じとか、人が一人ずつドアの向こうへ消えていくとか、やっぱりいいわ、すごいねえとか、そんなふうにぼけーっと見ているだけ。登場人物たちの、ものすごいブルジョワ生態があっけらかんとモチーフになっているので、軽妙な描写だけれども、色々深堀りして考えたくなる要素もいっぱいあるようで、でも結局それをさせないだけの世界構築の強さというか、有無を言わせぬ映画的パワーで作品そのものに観るものを引き付けて余計な余所見をさせない強さがすごい。ぐだぐだ、ドロドロのパーティーが終わりを迎えて、朝が来て、皆がぞろぞろと海辺に向かっていくとか、無意識に期待している方へとゆったりお話は進んで行き、やがてその朝と入れ替わり消え入るように終わってしまう。フェリーニみたいな、このような特有の感情を沸き起こさせるもののことを、何と言えばいいのだろうか。まあ、遊ぶにせよ、仕事にせよ、その、ああいうことで、驚きも、よろこびも、虚しさやなにかも、ああいうことであって、疲れた表情。目の下のクマ。砂浜に打ち上げられたエイの目玉。おぼえがないけれども、最後はくたくたになったけれども、たしかに心から楽しかったに違いない、実際に体験したはずのあるときの記憶だ。