ブエノスアイレス


ウォン・カーウァイブエノスアイレス」をDVDで。こういうのはもう、二度とありえないと思った。でもなんとなく、こういうものを見させられて、バカだから、こういうのを真に受けてたというか、信じ込まされてたみたいな、自分の二十代の頃の、なんか騙されてたみたいな、そういう逆恨み的な気持ちも、ない事もないと言ったら、あまりにも手前勝手だが、こういう話、こういう人間の在り方、そういうのもドラマとしてアリだと信じていた、という事とは、たぶん違うのだが。しかしこういう世界のあり方自体が、さすがに今、こんな風に香港や台北ブエノスアイレスが存在して、そこにこんな風に人々が生きているというのが、いや、そういうのはうそでしょ、と。というか、それは無理でしょ、嘘の話だとしても、もう無理でしょっていう。

いや、なぜ?無理じゃないかもしれないよ。こんな環境が実在して、こんな人物が実在していて、それが時代を問わず存在していたとして、その何がおかしいの?と言う声に、いやいや、それは無理ですよ、無視筋ですよと応える声の方が、どうしても説得力があると感じる。


それでも、あるいはだからこそなのか、最後までそれなりに面白く観てしまったのだから、なぜなのかよくわからない。ウォン・カーウァイを観るときに僕の場合はいつも、とくに後半になるとやや飽き飽きしてくるのを我慢しながらも、今回は微妙になつかしく、とくにラスト近く、灯台のふもとのシーンとか、けっこう良かった。


はじめてのウォン・カーウァイは、学生のとき観た「恋する惑星」で、とにかく観ている間中、あまりにも下らないと思って、心底、辟易したのを今でもおぼえている。再度観たらどう思うかわからないが、たぶんやはり、面白いとは思わないだろうなとは思う。やっぱりトニー・レオンとか、役者がそれなりの人だと、それで充分に観られる感じになるのだろう。