山河ノスタルジア


何か、映画でもと思って、DVDを引っ張り出してきて観た。ジャ・ジャンクーの作品を観るのは何年振りだろうか。「長江哀歌」を観て以来で、それ以降二作ほどあるみたいだけれども未見。「山河ノスタルジア」は2015年の作品だが、物語としては、1999年にチャオ・タオ演じる主人公の女性が二人の男性との三角関係を経て一人の男性と結婚出産して、その子供の大学生の姿が描かれるのが2025年の未来。その間、三角関係に敗れた男は十五年後にチャオ・タオと再会したり、チャオ・タオも離婚して父親が死んで7歳になった子供と再会するけれどもまたすぐに袂を分かつ決心をしたり色々とある。描写やエピソードなど、所々面白い箇所も多いが、二時間強の中で四半世紀にわたる時間の推移とその間の様々な登場人物たちが為したことの記憶、その積み重なりが、それほど上手く効果的にいい味わいを出すことが出来ていたようにはあまり感じられなくて、どちらかというとやや散漫というか、単にだーっと繋がってしまっているだけで、延々と描かれてきたそれぞれが堆積・減衰とともに深く発酵していくような作用というか、異なる時間と空間が不思議な力でつながっていくような、人間の記憶の中の時間的堆積の、一瞬気の遠くなるような巨大な感覚みたいなものを、こういう話であればどうしても期待したくなるけれども、そういう意味ではちょっと外したというか、そういう作品にはなってなかったかもしれない。しかし最後の2025年パートはなかなか良くて、チャオ・タオの息子と親子ほども年の違う大学教師が不思議な恋愛関係に陥っていくあたりは、理屈で考えると、とくに面白いエピソードだとも思わないけれども観ている感じとしてはかなり良かった。ヘリコプターとかラジコン飛行機とか、全編通じて飛ぶもの各種がわりと印象的という映画だった。ジャ・ジャンクーも少し作風変わったのかなと思った、けど以前の作品もずいぶん前に観て以来なのであまりおぼえてない。