退院


近鉄特急で8:00過ぎに伊勢市駅着。時間があるので駅前をぐるっと散歩する。外宮は駅から450メートルしか離れてないのか。前回来たときは、こっちの側に降りなかったのでわからなかったが、病院の方と反対側はそれなりに観光地らしさのある町並みだった。そのまま歩いて九時過ぎになって、前回も来た風呂屋へ立ち寄る。今回はちゃんとタオルや洗面道具など持参済みである。一時間半ばかり入浴して着替えて髭も剃って隣接する病院へ向かう。


退院の諸手続き、要支援度調査、支払い。金がばんすか無くなって気持ちがいい。親戚のSも来てくれたので車で父の住まいへ。酷い部屋の真ん中の傾いたような椅子に座り込んで、まあええわ、わかった、全部あとでいいわ、としか言わない。のれんに腕押しというか、まあ、昔からこうだったのかもな、この上っ面だけの感じな。まともに話すとか、場合によっては喧嘩になるとか、やはりありえないのかもな、昔ならともかく、今それを期待するには、もはや手遅れだな。その意味では僕も、やることが遅いわな。


それで最後、じゃあもう帰るわ、というと、おう。そうか、少し嬉しそうに、やっと帰るか、あー良かったみたいな態度で、じゃあ、気をつけてな。とか言って、他の皆にもよろしく伝えてな、とかなんとか、じつにもっともらしいことを言う。最後にお互いに向き合ったとき、たぶん今日はじめてだったが、なぜか顔が笑うので、僕も、自分が笑うと思ってなかったが、父親のその顔を真正面から見ながら、おそらくそのような顔になっていた。そのあと一人になったあと、最後に不思議なシーンを見せられたような、妙な印象が残った。


バス停まで歩いて、時刻表を見たら、次のバスまで三十分以上ある。待ってるのも無駄だし、次のバス停まで歩く。次のバス停に着いて時刻表を見たら、来るはずのバス時刻の表記が消えてる。おかしいと思ってさらに次のバス停まで歩くと、その時刻表もやはり次の到着はない。この時刻表だと、今日は夕方まで全くバスが来ないことになってしまう。いっそこのまま駅まで歩いてしまおうかとも思ったが、地図で見たら、これを最後まで歩くというのは、狂った行動としか言いようが無いような距離だったので、仕方がないのでその場でタクシーを呼んで鵜方駅まで移動。遠いな。二時間掛かって、名古屋へ。さらに二時間近く掛かって、ようやく東京。新宿まで移動してツタヤでビデオ返して(行きで返すつもりだったのだが時間がなかった。)九時過ぎに帰宅。長い一日だった。昨日の夜が、まるで数日前のことみたいに思える。