蝋梅

水元公園まで歩く。快晴の空だが、まさに真冬の寒さで、皮膚を切るかのような風が吹きすさんでいる。こんなに人のいない水元公園、はじめて見たという感じ。おびただしい数の鴨が、よたよたと長い行列をなして我が物顔で園内を闊歩しており、あらゆる樹々の枝に黒く巨大なカラスが枝をしならせて留まり鳴いていた。今日ここに来た目的は、園内にかなり早めの蝋梅が咲いたという情報を得たからなのだが、おそらくあのあたりだろうという地点まで歩くのに、途中周囲に何もなく芝生が広がるばかりのだだっ広い平原を歩いているとき、まさに刃物のような冷たい風にほとんど身を切られているかのような状態で、これって真冬の海を進む船の甲板に立っているのと同じで、何の遮蔽物もなく直接吹き付ける寒風の冷たさが本気で容赦なくて、これはもはや死ねるレベルの冷たさ、みるみると体温が逃げていくのがまるで少しずつ失血しているかのようなヤバイ不安感を増幅させる、まさか今日こんなに寒い思いをすることになるなんて予想してませんでしたと思わず泣き言を言いたくなった。が、ほどなくして咲き始めた蝋梅の木を発見。壊死して取れそうになってる鼻をティッシュで包んで無理やり鼻をかんで、ごしごしとこすって血流を戻して呼吸を整え、氷のように冷え切った外気をすーっと吸い込んでみると、あのなつかしいさわやかな香りがすっと感じられて、ああ真冬の香りだと思って、とりあえずミッションコンプリートに満足する。

帰宅して熱い風呂に長々と身体を沈めるが、いつものようなのぼせる寸前の状態にもならず、どうにか体温を取り戻したという程度の湯上り感だった。もう今日を経験してしまった身には今シーズンの寒さを大体耐えられる気がする。

レンタル配信で上田慎一郎「カメラを止めるな!」を観る。なるほどこういう映画ですねと思う、が、面白がって観ていられるかどうかはなかなか難しいと思ってしまった。