一人の時間


妻が飲み会なので、こちらも夜は一人飲み会。この店に来たのは四度目。料理が美味しいこと、ワイン品揃え豊富で値付け安価なこと、アラカルトで注文しやすいこと、ポーション調整を柔軟にしてくれること、従業員との距離感が丁度いいこと、ラストオーダーと閉店時間が遅めなこと、当日でも比較的席が取りやすいことなど、様々な要素が自分には都合良く重宝する。


一人で食事してるのは、ほんとうに和むし、好きな時間である。皿を待つ間は読書したりもするけど、食事が始まると頁を繰るのも途中で止まってしまうことが多い。ただゆっくりと、自分のペースで食べて飲んでるだけだ。先日読んでいた本の中にこんな言葉が。まさにこれこそが中年ということだな。

ところでその小母さんが言ったことでとくに記憶に残っていることがある。
でも、こうしてもう若くなくなって、一つだけほんとうに嬉しいことがある。一人で贅沢なレストランに入ってのんびり食べること、あれは若いうちにはとてもできなかった……。

たしかに若い女だったらなまぐさすぎる。もうその女の隣に男がいようといまいと回りが気にすることもなくなったころ、一人で洒落こんでレストランに入り、ゆったりと食事をとる。
若くなくなった女の特権であった。

至福の瞬間---ジョン・トラヴォルタ 水村美苗「日本語で読むということ」所収


(僕が行った店はまったく贅沢な店ではないけど、しかし、やはり贅沢なのだ。そのような一人の時間こそ贅沢なのだ。)


(何年か前までは一人でフレンチの店に行ったりすると、サービスの人から「同業の方ですか?」などと聞かれたりすることもたまにあった。一人で来てるのはつまり料理の勉強のためと思われたりするのだ。でもさすがに最近は、そう思われることもなさそう。)