寒い

七時間以上眠ったが、まだ眠りたい、寒い朝
玄関のドアを開けて出掛けると、風が冷たく厳しい。
寒さには、心の中に立つ芯の部分に対して苛むような力がある。
首をすくめて、全身に力を込めて、自分がぎゅっと凝縮したような気持ちで無理に足を動かして前に進む。
冷気が身を包み込んで、衣服を通り抜けて下着の内側へ、そしてまだ充分に目覚めきってはいない頭の中にまで、直接流れ込んでくる。
それはまさに、心が折れそうな、そんな言い方がぴったりの、耐え難さと泣きたいような情けなさをともなってその己が身の内部構造が崩落するかもしれない予感だ。
過去、寒さの中に死んでいった人々を思う、というか寒さの中に死んでいくことをほんの浅い入口から想像したくなる。
ほんとうになさけない、みっともない寒がりめ、裸にして冷水でも浴びせてやれ。
(その昔、ほんとうにそんな虐待を受けて殺された人もいた。)