重い

先週から読んでいる佐藤亜紀「スイングしなけりゃ意味がない」が佳境で、ナチス政権下のドイツ、主人公をはじめとする比較的富裕な家庭に育ったティーンエイジャーたちが、敵性音楽たるスイング・ジャズに骨の髄までやられて、当時のユーゲントらや有象無象のダサい連中とは一味違うとの矜持を胸に秘めつつ、夜な夜なパーティーで飲めや歌えの享楽的生活を送るものの、ご時世は刻々と変化していき…という筋立てで始まって、こんな物語を書くことが出来るなんてすごい!と素朴に驚きつつ読み進めてきたのだが、中盤以降の展開の深刻さに相当気が重くなる。ちなみに毎月今頃になると色々と煩雑で心労過多な仕事のせいで、自分にしては会社を出る時間が遅くなる日も多くなりがちではあるのだが、帰宅途中に本の続きを読むと、その内容でこれまたドーンと気が落ち込む感じ。とはいえ異なる気の重さを二つ同時に抱えるのは意外と悪い気分ではなく、重さが二倍になるのではなくてお互いの重さを比較する視野に気付くことになるし、両者のフィクションとしての違いを感じもする。そこにはかすかな面白味もある。しかし取り急ぎ早く本の続きに戻りたい。