技術

ダムタイプ関係者のインタビューには裏方スタッフ特有の技術話が多いが、どれも大変興味深いものだ。とにかく当時、編集がリニアからノンリニアへ変わるということと、映像、音楽、照明が同期するということが、ものすごく画期的なことだったというのがリアルに伝わってくる。

リニア編集とは要するに、ある映像とある映像を合成するならば、各映像をリアルタイムで再生して編集(ダビング)することだ。つまり一時間の映像を編集するなら、最低一時間はかかる。どんな些細な編集でも、五分や十分では出来ないことになる。これはカセットテープで録音した経験のある世代ならば、直観的にわかる感覚である。

映像、音楽、照明の同期は、各ハードウェアがインターフェイスを介して繋がり、共通の信号を授受できることで実現する(インタビューでは映像がマスターで、音と照明がスレーブだと言っていた)。これもまさに昔っぽい話で、当時は異なるハードウェアが繋がるというだけで、大変画期的なことだったのだ。逆に言えば、それが実現するだけでとてつもなくすごいテクノロジーのイメージに思えたということだ。

但しこれらの機材は当時ですらあくまでもコンシューマ機のレベルで実現可能だったということ。お金の後ろ盾があって、高価の機材を使ってやってることではないのだ。みんな手弁当で、自費でやっているのだ。だからこれは、あくまでも「素人集団」の苦労話なのだ。

ダムタイプのような作品は、80年代から90年代にかけてだからこそ成立したとは言えるのかもしれない。作品の「質」が、あの時代のテクノロジーの「質感」とセットになっていて、それはあれ以上古びてもダメだしあれ以上新しくてもダメな気がする。しかしそれはダムタイプの限界を意味しないとも思う。逆に、その時代に固有の「質感」をいつの時代にも再生し得るパッケージとして、いつまでも参照可能だということを示していると思う。