上昇と下降

持続は、下方へ向かえば、その極限においては、純粋な等質性、いわば物質としての純粋な反復がある。まったく差異を生まない反復。すなわち物質。

持続が上方へ向かえば、その先には生の永遠がある。おそらく上方の先はイメージ不可能。それは下方の極限たる物質を、イメージ不可能であるのと同じことか。

この上下関係の話が頭の中にあるうちに、たまたまシモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵」をぱらぱらと読んでいたら、この本もまた、やはり上方と下方の運動をモデルに論を展開していたので、これは偶然なのか何なのかわからないけど、なんとなく面白く感じた。

ヴェイユにおいては、精神は重力の影響を受け、ほっとけば下降する。だから下降するな、と、ヴェイユは読み手に訴えない。ヴェイユはまるで唯物論者のように、人の心の中を説明する。あまりの不幸にあったとき、人の内面にどのような下降が起き、どのように真空が生成し、どのように恩寵がもたらされるか、あるいはそうでないかを、きわめて淡々と、まるで彼女が知っている客観的事実であるかのように書き連ねているといった印象だ。