死んでお棺に横たわってる人の顔を見ると、生前のその人とは人相が変わってる、というか死んだことで、もともとの人相があらわれたと考えたほうが良いか。

その人物が生前に醸し出していた固有の複雑なイメージが失われて、原形質がそのままあらわれているということか。

しかも大抵の場合、その顔は故人の御身内や親族の誰かに似ていて、それが生前なら似ているなどとは一度も思わなかった人に似ていたりする。だから逆に不思議だ。なぜ生きているときに、この人はこの顔ではなかったのか。

遺体とは、すでに意識を手放した身体だ。それは物質だ。物質の、かつては顔だったものだ。しかし残された我々にとって、未だにそれは顔に見える。でも彼ではなく別人になってしまった。意識と身体は完全に別ではないのだ、身体も消えるのだ。生前の彼は消えたのだ。