大豆田とわ子とソラリス

昨晩タルコフスキーの「惑星ソラリス」を観ていた。主人公が宇宙ステーションに到着するが、ふたりの科学者は明らかに様子が変で、しかも船内の様々な場所で、若い女や子供のような人物の姿を見かける。

それは幽霊でもなく幻覚でもなく、ソラリスの力によって、我々の記憶が物質化されたものではないかと、ビデオで主人公へのメッセージを自撮りした後で自殺してしまったかつての友人が、主人公へモニタ越しに語りかける。その映像にも、友人の背後を通り過ぎる若い女の姿がしっかりと映ってる。

さらに、かつて亡くなったはずの主人公の奥さんがあらわれ…。そのあたりで、眠くなって途中で再生を止めた。

まったく説明不可能だしこれ以上展開の余地もない単なる思いつきだけど「大豆田とわ子と三人の元夫」のようだと思った。時と場合をいっさい考慮せず、松たか子の家に遊びに来る三人の男たちは、もしかするとあの家で、誰かの記憶が物質化したイメージではないのか。

あの男たちは、勝手に家に押しかけてきて、食べ終わった後のふたつの食器など見て「誰かいるはずだ」とか言って家中を探し回る。まるで、それまで物質化していたはずの存在をもう一度この場所へ召喚しようとするかのごとく、あるいは不在者の存在をたしかめることで自らの存在をも証明できるものと思い込み、それに躍起になっているかのごとく。

主人公のケルヴィンの、頭に去来するすべての思いや考えをいったん内側に留めてじっと耐えているかのような無表情が、なぜか部屋で大騒ぎする元夫たちの声を、黙って聞き流している松たか子の表情に重なる……。